個人事業主・フリーランスの確定申告
個人事業主やフリーランスは「1年間でいくら儲けたのか」や、「税金をいくら支払うか」等を、自分で計算して申告しなくてはなりません。
はじめての確定申告となると、「何をしたらいいの?」と不安に思うことが多いかもしれませんが、確定申告のことを知っておくと、税金が安くなるなど有利なこともたくさんあります。
ここでは、確定申告の基礎から節税のコツ、そして申告方法から提出方法まで、さまざまな情報を順にご紹介いたします。
【メニュー】
- 確定申告とは
- 確定申告が必要となるのは所得金額が○○万円以上
- 節税のコツ
- 青色申告と白色申告
- 確定申告の時期(期間と提出期限)
- 確定申告で提出する書類
- 確定申告書の作り方・書き方
- 収支内訳書(白色申告)・青色申告決算書の作り方・書き方
- 確定申告書Bの作り方、書き方
- 提出方法
- 確定申告をしないとどうなるの?
- まとめ
1.確定申告とは
個人事業主・フリーランスとは切っても切れない確定申告。そもそも、確定申告とはいったい何なのでしょうか?
簡単にいうと、1年間の収入や支出、「もうけはこうだったので、これだけ税金払います」
というのを自分で計算して、税務署に申告することをいいます。
我が国は納税者に対して、申告納税制度という制度をとっています。これは、税金を納める側が、1年間の所得や税金を計算しその金額を国に申告・納付しないといけない制度です。この申告を確定申告といいます。
2.確定申告が必要となるのは所得金額が65万円以上
タイトルを見て「あれっ、確定申告しなくていい人もいるの?」と思われた人もいるかもしれません。
実は個人事業で確定申告する場合には、 【絶対に申告しないといけない場合】 と 【申告しなくてもよい場合】 の2種類あります。
では、それぞれを見ていきましょう。
@所得と所得金額
確定申告が必須か、不要かの判断の基本となるのが「所得」と「所得金額」です。
生活しているとさまざまな収入があります。
本業の事業の収入だったり、副業の収入だったり、預金の利息も収入といえます。
確定申告では、こういった収入がどのように発生したのかを考えて10の種類に分類しています。これを「所得」といいます。
例えば、本業の事業だと「事業所得」、アパートを貸していたら「不動産所得」、預金の利息は「利子所得」です。
個人事業主・フリーランスの所得は「事業所得」になります。
「所得に対していくら税金を支払います」という計算の基になるのが「所得金額」です。
「所得金額」とは、売上などの「収益」から、仕入や経費などの「費用」を差し引いた金額、いわば「もうけ」です。
所得金額=収益−費用
まとめると以下のとおりです。
「所得」・・・収入の種類
「所得金額」・・・収益から費用を差し引いたもうけ。税金の計算の基になる。
A「絶対に申告しないといけない場合」と「しなくてもよい場合」
これは、個人事業が専業の場合と副業の場合で基準が異なります。
個人事業が専業の場合
つまり、
納める税金がない人は、確定申告をしなくてもよいことになっています。
では、納める税金がないとはどういう状況をいうのでしょうか?
個人事業が専業の場合、所得金額が38万円以下なら納める税金がありません。
こちらは後で詳しく見ていきますが、確定申告にはまず「基礎控除」が38万円あり、それ以下の所得だと納める税金が出ない仕組みになっているからです。
※確定申告しないと銀行からの融資ができなかったり、子供を保育園などに入園させるときに必要な収入証明が発行できないということがあります。
確定申告をする必要のない所得金額でも、あえて申告する方もいます。
個人事業が副業の場合
サラリーマンの方などで個人事業が副業の場合、副業の事業所得の所得金額が20万円以下なら確定申告をしなくてもよいことになっています。
あくまで「所得金額」ですので、入ってきた金額ではなくそこから経費を引いたもうけが20万円以下の場合です。
副業の場合は本業の場合と違って、確定申告させれば納める税金が増えるのですが、税務署での処理の手間と増える税金の金額のバランスにより、20万円以下は確定申告をしなくてよいことになっています。
医療費などの控除との関係もありますが、この条件を知らずに確定申告すると納める税金が増えることが多いので、誤って申告しないように注意してください。
3.節税のコツ
所得税は、所得金額(もうけ)にかかります。
所得金額をいかに低く抑えることができるか、ここが節税のポイントとなります。
節税の3つのポイントを見ていきましょう。
所得金額はもうけです。「経費」が増えると「もうけ」が減るので税金が安くなります。とはいえ、経費を水増しするということではありません。
実は、経費になるというものが結構あります。これをきちんと経費にしましょうという話です。
個人事業主・フリーランスの場合、わざわざ事業用のお金とプライベート用のお金を分けている人は多くありません。出どころは1つのため、必要経費なのかそうでないのかがわかりにくいことも多々あります。順を追って経費の導き方を見てみましょう。
@まずその支払いが100%経費になるものか、ならないものかを考えます。
生命保険や医療費、寄附金など事業とまったく関係ないものは経費になりません。
逆に事業と関係があるものは経費になります。
勘定科目 | 経費になるもの |
---|---|
交際費 | 取引先との飲食代、お中元・お歳暮 |
消耗品費 | 10万円未満のパソコンや机、クリーニング代、ゴミ袋代 |
事務用品費 | コピー用紙、文房具 |
水道光熱費 | 事務所の水道代、ガス代 |
通信費 | 携帯電話代 |
租税公課 | 印紙代、自動車税、事業用資産の固定資産税 |
修繕費 | 事業用の車の修理代 |
衛生費 | ゴミ処理代(いずれかの勘定科目で処理) |
外注費 | 作業を外注した際の費用 |
支払手数料 | 印鑑証明や住民票発行などの役所に対する手数料、振込料 |
諸会費 | 組合費 |
荷造運賃 | 宅急便 |
旅費交通費 | 電車代、タクシー代 |
取材費 | 取材でかかった費用 |
雑費 | その他の費用 |
★経費にならないものの一例
生命保険料、ふるさと納税、募金、病院代、入院費、家族旅行の費用
国民健康保険、国民年金、借入金の返済
A100%仕事用で使っていないが、何割かは仕事に使っている経費は仕事に使っている部分を経費にすることができます。
よくあるのが、自宅兼仕事場の場合です。
水道代や電気代など生活にも使いますし、仕事でも使いますよね。でも支払いは一括です。その場合は次のように計算します。
仕事に使っている金額=支払金額×仕事で使っている割合(事業割合)
これを家事案分といいます。
事業割合の主な例は次のように求めます。
- 家賃や固定資産税…自宅の総面積の中に仕事場の面積がいくらか=「面積割」
- 電気代や水道代…1日の中でどれだけ業務をしていたかの時間=「業務時間」
- 自家用と仕事用の車…「走行距離」
例)
1月の家賃 100,000円を支払った。
「仕事場の面積 20u」 「自宅総面積 100u」 の場合(=自宅の2割を仕事に使用)
経費になる金額は、
100,000円×(20u/100u=20%)=20,000円です。
事業割合については1か月〜2か月程度統計をとってみるのもいいでしょう。
またその統計結果は保存しておいてください。
大事なのは、きちんとした根拠に基づいて按分計算していますということを見せられるようにしておくことです。
※確定申告で書類に書く必要はありませんが、聞かれたり、税務調査が入ったりしたときは説明できなくてはいけません。
適当に何でもとりあえず経費〜はバレると追徴課税の可能性がありますよ!
先ほど「所得金額」に税金がかかるという話をしましたが、実は「所得金額」から差し引けるものがあります。
これを「所得控除」といいます。
養っている家族の人数や医療費にお金が多くかかった。生命保険や地震保険の支払いがあるなど、個々の人ごとに生活に必要なお金を考慮するために設けられている控除のことを「所得控除」といいます。
所得税の計算をするときには、所得金額から所得控除が差し引かれます。
ここで所得税の計算の流れを見てみましょう。
@所得金額を求めます。
所得金額とは、もうけを表します
所得金額=収益−費用
A課税される所得金額を求めます。
課税される所得金額とは、所得金額から所得控除を差し引いた金額です。
課税される所得金額=所得金額−所得控除
B所得税の金額を計算
課税される所得にその所得金額に応じた税率をかけ、所得税額を求めます。
所得税額=課税される所得金額×所得税の税率
所得税の税率は所得によって変わります。
所得が高ければ高いほど税率が高くなります。
C納付金額の計算
・税額控除
住宅借入金控除や政党などへの寄付金は、所得税の金額から直接控除することができます。
・復興特別所得税
東日本大震災からの復興を図るため、平成49年まで所得税額の2.1パーセントが復興特別所得税として加算されます。
納付金額=所得税の金額ー税額控除+復興特別所得税
上記Aでみたように、所得控除が多ければ多いほど税金は安くなります。
そのため、どのような所得控除があるかを知っておくことが重要です。所得控除には以下の種類があります。
控除の種類 | 内容 |
---|---|
雑損控除 | 火災や盗難、横領によって住宅や家財などに損害を受けた場合の控除 |
医療費控除 | 一定額以上の医療費の支払いがある場合の控除 |
社会保険料控除 | 健康保険、国民年金、介護保険の支払いがある場合の控除 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛け金の支払いがある場合の控除 |
生命保険料控除 | 生命保険会社等に生命保険や個人年金保険の支払いがある場合の控除 |
地震保険料控除 | 地震保険料や旧長期損害保険料の支払いがある場合の控除 |
寄付金控除 | 国や地方、政治献金などがある場合の控除 |
寡婦・寡夫控除 | あなたが寡婦または寡夫である場合の控除 |
勤労学生控除 | あなたが勤労学生である場合の控除 |
障害者控除 | あなたや親族が障害者である場合の控除 |
配偶者控除 | 控除対象の配偶者がいる場合の控除 |
配偶者特別控除 | 所得が38万円超76万円未満の配偶者がいる場合の控除 |
扶養控除 | 控除対象の扶養家族がいる場合の控除 |
基礎控除 | 本人に対する控除 |
もし控除を受けられそうなものがあれば、下で詳しくチェックしてみましょう
@雑損控除
火災や盗難、横領によって住宅や家財などに損害を受けた場合の控除です。
本人や扶養している配偶者、親族が持っている生活に通常必要な資産が対象です。
※生活に通常必要な資産が対象のため、事業用の資産は対象になりません。事業用資産に損害があった場合は、事業所得の経費になります。また、1つ30万円超の貴金属や骨董などの美術品は生活に通常必要とはみなしません。
<控除額>
次のうち、多い方の金額が控除額になります。
1.損害金額※1−保険金等で補填される金額−所得金額×10%
2.災害関連支出金※2−50,000円
※1損害金額には、災害等に関連してやむを得ない支出(盗難や横領により損害を
受けた資産の原状回復のために支出した金額など)を含みます。
※2災害関連支出金とは災害により被害をうけた住宅、家財などを取壊し
又は除去するために支出した金額などのことをいいます。
<注意点>
雑損控除は、ほかの所得控除より必ず先に所得金額から差し引きます。所得控除のなかで、雑損控除だけは余ったら翌年以降3年間繰越できるからです。
<添付書類>
災害等に関連してやむを得ない支出をした金額についての領収書
A医療費控除
一定額以上の医療費の支払いがある場合の控除です。本人や扶養している家族のものを支払った医療費が対象です。
<控除額>
次の計算式で計算した金額(最高200万円まで)。
医療費の金額−保険金等で補填される金額−「所得金額×5%(最高10万円)」
<注意点>
・医療費はその年に支払ったものに限ります。未払いのものは含みません。
・保険金がいくら戻ってくるか未確定の場合、保険金等で補填する金額を0円で申告します。戻ってくる金額が決まり次第、修正申告します。
・市販のかぜ薬や病院までのタクシー代などの交通費も、医療費に含まれます。
(自家用車のガソリン代は含まない。)
バス、電車など領収書がない場合は出金伝票やメモに日付、路線、金額を記載しておきます。
<添付書類>
1.医療費の領収書
2.医療費の明細書…人ごと、病院ごとに金額を記載する。
B社会保険料控除
健康保険、国民年金、介護保険などの支払いがある場合の控除です。
本人や扶養している家族のものを支払ったものが対象です。
<控除額>
支払った金額そのままです。
<添付書類>
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
※健康保険料については、控除の証明書の添付は不要です。
既に年末調整でこの控除を受けている場合は添付不要です。
C小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済の掛け金の支払いがある場合の控除です。
法律上、小規模企業共済掛金にはいろいろな種類がありますが覚える必要はありません。
毎年9月〜11月ぐらいにくる控除証明書に小規模企業共済等掛金控除に必要と記載されています。
<控除額>
支払った金額そのままです。
<添付書類>
支払った金額の控除証明書
既に年末調整でこの控除を受けている場合は添付不要です。
D生命保険料控除
生命保険会社等に生命保険や個人年金保険の支払いがある場合の控除です。
生命保険料は、24年1月1日以後に契約を締結した保険料と23年12月31日以前に契約を締結した保険料で扱いが異なります。
24年1月1日以後に契約を締結した保険料は「新生命保険料」「新個人年金保険料」「介護保険料」の3つに分かれています。
23年12月31日以前に契約を締結した保険料は、「旧生命保険料」「旧個人年金保険料」の2つに分かれています。
<控除額>
保険料が「新契約」か「旧契約」かで計算方法が変わります。
どちらの契約に当たるかは、契約書や控除証明書に記載されています。
控除額の最高は12万円です。
計算方法はこちらです。
<注意点>
返戻金などがある場合、その金額は引きます。
控除証明書には9月までの支払い金額と12月までの支払予定の金額の2つの金額が記載されている場合がありますが、12月までの支払予定の金額を使います。
<添付書類>
支払った金額の控除証明書(旧生命保険料の場合は1契約9,000円以下の場合不要)
既に年末調整でこの控除を受けている場合は添付不要です。
E地震保険料控除
地震保険料や旧長期損害保険料の支払いがある場合の控除です。
※旧長期損害保険料とは平成18年12月31日までに締結した保険期間が10年以上の火災保険料などで一定のものをいいます。
<控除額>
契約内容によって計算方法が異なります。
地震保険料で控除額は最大5万円、旧長期損害保険料最大1.5万円です。
両方足して5万円を超える場合は5万円までとなります。
計算方法はこちら
<注意点>
事業で使っている資産に対する地震保険は所得控除になりません。事業所得の経費です。
短期の火災保険料について、事業用の資産に対するものは経費になりますが、事業用でない資産の場合は経費にも所得控除にもなりません。
控除証明書には9月までの支払い金額と12月までの支払予定の金額の2つの金額が記載されている場合がありますが、12月までの支払予定の金額を使います。
<添付書類>
支払った金額の控除証明書
既に年末調整でこの控除を受けている場合は添付不要です。
F寄付金控除
国や地方、政治献金などがある場合の控除です。ふるさと納税もこちらになります。
<控除額>
支払った寄附金(最大所得金額の40%まで)−2,000円
<注意点>
ここでいう寄附金とはあくまで、国や地方、政党など公的な機関への寄付金です。夏祭りの寄付金などは該当しません。
また、所得控除になる寄附金のうち政党に対する寄附金、認定NPOに対する寄附金、公益社団法人等に対する寄附金の3つは「税額控除」にすることもできます。
<添付書類>
寄附金の受領証
寄附先によって、認定証や寄付金控除のための書類などが必要な場合もありますが、ほとんどの場合、確定申告までに寄附先から書類が送られてくるため問題ありません。
また、年末の寄附などで添付書類が確定申告まで間に合わない場合は、届き次第すぐに提出します。
G寡婦・寡夫控除
あなたが寡婦または寡夫である場合の控除です。
寡婦(寡夫)とは配偶者と死別・離婚したあと再婚していない人のことです。
<控除額>
27万円
寡婦で(寡夫は除く)扶養親族である子があり、本人の所得金額が500万円以下の場合は35万円
<添付書類>
なし
H勤労学生控除
あなたが勤労学生である場合の控除です。
※勤労学生とは、簡単にいうと働きながら学校に通っている人のことです。
<控除額>
27万円
<注意点>
その年の所得が65万円より多い場合、または勤労以外の所得(給与所得、退職所得、事業所得、雑所得以外)が10万円より多い場合は控除を受けられません。
<添付書類>
学校などからの証明書
既に年末調整でこの控除を受けている場合は添付不要です。
I障害者控除
あなたや親族が障害者である場合の控除です。
<控除額>
障害者・・・27万円
特別障害者(障害者のうち時に重度の障害のある方)・・・40万円
同居特別障害者・・・75万円
<注意点>
障害者控除は16歳未満の扶養親族にも適用されます。
<添付書類>
不要
特別障害者の控除の場合は証明する書類(障害者手帳など)が必要
J配偶者控除
控除対象の配偶者がいる場合の控除です。控除対象になる配偶者の条件は次の通りです。
・その年の12月31日現在、あなたと生活を一にしている
・その年の所得金額が38万円以下
・青色申告や白色申告の専従者として給与や控除を受けていない
<控除額>
一般の配偶者…38万円
老人控除対象配偶者(70歳以上)…48万円
<注意点>
配偶者が給与所得のみの場合は、給与収入103万円以下の場合に対象となります。
<添付書類>
なし
K配偶者特別控除
所得が38万円超76万円未満の配偶者がいる場合の控除です。
これは所得金額38万円超の配偶者がいる場合でも、一定の場合は控除をうけられるようにしているものです。控除対象になる配偶者の条件は次の通りです。
・その年の12月31日現在、あなたと生活を一にしている
・その年の所得金額が38万円超76万円未満
・青色申告や白色申告の専従者として給与や控除を受けていない
<控除額>
配偶者の所得金額により控除額が変動します。
最大38万円です。
金額の詳細はこちら
<注意点>
あなたのその年の所得金額が1,000万円超の場合は受けられません。
配偶者が給与所得のみの場合は給与収入103万円超141万円未満の場合に対象となります。
<添付書類>
不要
L扶養控除
控除対象の扶養家族がいる場合の控除です。控除対象になる扶養家族の条件は次の通りです。
・配偶者以外の親族である
・その年の12月31日現在、あなたと生活を一にしている
・その年の所得金額が38万円以下
・青色申告や白色申告の専従者として給与や控除を受けていない
<控除額>
一般の扶養親族…38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満)…63万円
老人扶養親族(70歳以上)…48万円(同居している場合は58万円)
<注意点>
16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象になりません。
<提出書類>
不要
M基礎控除
本人に対する控除です。
<控除額>
38万円
<添付書類>
不要
節税対策の1つして青色申告があります。
最初に説明したように、確定申告では納税者が自分で利益や税金の金額を計算し、申告・納税しなければいけません。正しい利益や税金の金額を計算するためには、普段から日々の取引をきちんと帳簿に残しておく必要があります。
「普段から正確な帳簿付けをしている人には、税金面で優遇しますよ」というのが青色申告です。
優遇の詳細は事項で説明しますが、節税するためには経費をきちんと管理したり、日々の取引を正確に帳簿付けする必要があります。
そのためには、「会計ソフト」の利用をおすすめします。今の会計ソフトは使うだけで青色申告の要件を満たすように考えられているので、そこを意識する必要がなく楽ですね。
では、青色申告の要件なども含め、少し詳細を見ていきましょう。
4.青色申告と白色申告
確定申告は大きく分けて白色申告と青色申告に分かれます。
また青色申告も10万円控除と65万円控除に分かれます。
10万円控除、65万円控除とは、収益−費用のもうけからさらに10万円または65万円を
引いてくれることをいいます。
それぞれの違いを見てみましょう。
白色申告 | 青色申告10万円控除 | 青色申告65万円控除 | |
---|---|---|---|
所得の種類 | すべての所得で選択可能 |
不動産所得 |
不動産所得 |
事前の届け出 | 不要 | 必要 | 必要 |
記帳方法 | 単式簿記 | 単式簿記 | 複式簿記 |
帳簿の保存義務 | あり | あり | あり |
青色申告の特典 | なし | あり | あり |
<違い1>所得
青色申告ができる所得は不動産所得・事業所得・山林所得(10万円控除のみ)と決まっています。
白色申告はすべての所得が対象です。
<違い2>事前の届け出
青色申告をするためには事前の届け出が必要です。
白色申告は届け出の必要はありません。
<違い3>記帳方法
白色申告と青色申告10万円控除は、単式簿記という簡単な記帳方法で処理できます。
青色申告65万円控除は複式簿記という少し複雑な記帳方法です。
<違い4>帳簿の保存義務
平成26年からは白色申告も帳簿を保存する旨義務付けられました。
そのため現在は白色申告・青色申告で大きな差はなくなりました。
<違い5>青色申告の特典
青色申告の特典はいくつかありますが、主なものは次の3つです。
正確な帳簿付けをすると最高65万円の控除を受けられるというものです。
所得税の計算の流れをみましたが、10万円控除、65万円控除は所得金額の計算で控除
されます。
所得金額=(収益−費用)−最高65万円
※収益−費用が10万円または65万円未満の場合はその金額までしか控除できません。
所得税では、配偶者や家族に対する給料は経費にすることができません。
青色申告をしている場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、15才以上の家族に対する給料(青色専従者給与といいます。)を経費にすることができます。
届出書の提出期限は事業開業の日から2か月以内です。
青色申告をしている場合は、赤字の金額を3年間繰り越すことができます。赤字を繰り越すことで、翌年以降出た黒字をその分相殺することができます。
上記3つの特典は白色申告にはありません。
5.確定申告の時期(期間と提出期限)
確定申告の提出期限は翌年2月16日〜3月15日となっています。
※土日に該当する場合は、日付が異なりますのでご注意ください。
2017年は2月16日〜3月15日です。
この期間に1月1日から12月31日までの期間の利益や税額を計算し、確定申告しないといけません。
税金が戻ってくる場合は翌年1月4日から提出することができます。
6.確定申告で提出する書類
確定申告で提出する書類は青色申告と白色申告で違います。
- 青色申告で提出する書類…「確定申告書B」「青色申告決算書」
- 白色申告で提出する書類…「確定申告書B」「収支内訳書」
※「確定申告書B」は納める税額を計算する書類、「青色申告決算書」や「収支内訳書」は会社の経営状況を記載する書類です。
それぞれの書類が税務署から送られてきます。「青色申告決算書(収支内訳書)」と「確定申告書B」は別々で送られてきますので注意してください。
医療費控除などの所得控除を受ける場合は、それぞれの証明書なども一緒に添付します。
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7.確定申告書の作り方・書き方
確定申告をするときの大きな流れですが、以下のようなものです。
@日々の帳簿付けを正しくする
A決算の帳簿付けをする
B帳簿から各勘定科目の残高や合計金額を計算する
C青色申告決算書や収支内訳書に集計した残高や合計金額を転記し、利益を計算する
D確定申告書Bで求めた利益から納付税額を計算する
ここでは@〜Bまでを見ていきます。
@日々の帳簿付けを正しくする
確定申告時期がくるまでは日常の帳簿をつけていくことになります。1か月ごとなど定期的に記帳間違いがないか確認しましょう。
売上や仕入は請求書、納品書とつき合わせましょう。実際の通帳残高と帳面が合っているかどうかも大事です。
売上、仕入、通帳残高があっていれば大きな間違いがある可能性はかなり低くなります。あとは細かい領収書などの抜け漏れがないか確認します。
領収書や帳簿は確定申告のときに提出義務はありませんが、保存の義務があります。特に領収書は紛失の恐れもあるので、月ごとにノートに貼る。封筒に入れるなどなくさないように保管しておきましょう。保管方法について、とくに法律では決まっていません。
A決算の帳簿付けをする
日々の帳簿付けが終わり、12月31日になったら年に1度の帳簿付けがあります。主なものを見ていきましょう。
・今年売れて、翌年に入金になる売上を記帳する。
確定申告では、白色申告も青色申告も「発生主義」をもとに売上や仕入などを計算しないといけません。
「発生主義」とは、簡単にいうと「お金をもらっていない、または払っていなくても商品が移動したら売上や仕入にしよう」というものです。
普段、入金があったときに売上にしていても、決算では「入金はまだだが商品は相手に渡しているもの」を売上にプラスします。
・今年購入して翌年に支払うものを仕入や経費に記帳する。
今度は売上の逆です。普段、支払ったときに仕入れや経費にしていても、決算では「支払いはまだだが商品が届いてるもの」を仕入や経費にプラスします。
・棚卸…商品を販売している場合は、12月31日現在の実地の棚卸をする必要があります。
棚卸とは商品の在庫数を数えいくら売れ残っているかを把握する作業です。確定
申告では売上げた商品しか仕入にすることができません。売上に対応した仕入れ
を「売上原価」といいます。そのため、売れ残った商品は仕入れから差し引く処理をします
・減価償却費…1つ10万円を超えるものは、固定資産に計上する必要があります。固定
資産にしたものは購入時に全額経費にできず、一定期間をかけて毎年少し
ずつ経費にします。例えば、100万円の機械を10年間で経費にする場
合は、毎年10万円ずつ経費にします。
B帳簿から各勘定科目の残高や合計金額を計算する
すべての帳簿付けが終わったら、1年間の合計金額や残高を計算しましょう。
8.収支内訳書(白色申告)・青色申告決算書の作り方・書き方
1年間の合計金額や残高を計算したら、青色申告決算書や収支内訳書にそれらの合計金額を転記し、利益を計算します。
・収支内訳書
全2ページです。
1ページ目は氏名や住所などの情報、1年間の損益の合計金額などを記載します。
2ページ目は売上先や仕入先、減価償却費の明細を記載します。
具体的な書き方は以下を参照にしてください。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2015/pdf/30.pdf
・青色申告決算書
全4ページです。
1ページ目は氏名や住所などの情報、1年間の損益の合計金額などを記載します。
2ページ目は月別売上高や仕入高、給料賃金や専従者給与などの明細を記載します。
3ページ目は主に減価償却費の明細を記載するページです。
4ページ目は貸借科目の残高を記載します。
具体的な書き方は以下を参照にしてください。
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2014/pdf/33.pdf
9.確定申告書Bの作り方、書き方
確定申告書Bは納める税金を求めるものです。第一表と第二表が基本のセットです。
第一表で税金の計算を、第二表でその内訳を記載します。
以下の記載例を参照にしてください。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kisairei2015/pdf/shinkoku_b.pdf
第一表の左側「収入金額」に売上高を(事業の場合はア欄)、「所得金額」に青色申告の場合は10万円や65万円控除を差し引いた金額(もうけ)を記載します。そこから所得から差し引く金額(所得控除)を記載し差し引きます。
第一表の右側で、差し引いた所得に税率をかけて税額を計算します。
10.提出方法と納付方法
<提出方法>
確定申告書の提出方法は次の3つです。
・所轄税務署の窓口に持参
提出用と控えの2部を作成し、持参します。 控えに受付印を押して返却してもらいます。銀行などに提示する場合は受付印の押された控えでないといけないので必ず控えも持参しましょう。
・郵送で所轄税務署に提出
郵送で提出する場合は、提出用1部、控え1部、切手を貼った返信用封筒を同封します。後日受付印の押された控え郵送で返信されます。
※提出日は消印の日になります。提出期限ぎりぎりの場合はできるだけポストに投函することは避け郵便局に持参しましょう。できれば簡易書留で送付するようにしましょう。
・e-Taxで送信
e-Taxで送信することで紙ではなくデータで提出することができます。ただし、あらかじめ電子申告する旨を税務署に届け出ておく必要があります。
<納付方法>
所得税の納付方法は次の3つです。
・現金で納付
所得税の納付書は確定申告書と同じ封筒で送付されてきます。納付書に納税金額を記載し、所轄税務署の納税窓口や、銀行、郵便局で支払います。納付期限は、確定申告書の提出期限である翌年3月15日です。
※コンビニでは納付できないので注意が必要です。
・振替納税
指定した口座から自動で引き落としされる納付方法です。振替納税の場合は毎年4月中旬(20日)に自動で引き落としされます。
※確定申告書の提出期限である翌年3月15日までに「預貯金口座振替依頼書」を提出することが必要です。
・e-Taxで納付
インターネットを通じて納付する方法です。
※平成29年1月以降、クレジットカードでの納付が可能になる予定です。国税庁のHPからクレジットカード情報画面に推移するようになる予定です。
11.確定申告をしないとどうなるの?
青色申告の場合は、2回期限内に申告しないと青色申告を取り消されます。また、税金の支払いが遅れると、延滞税が加算されます。
利益がでているのに意図的に申告しなかった場合は、延滞税より重い重加算税が課せられたり最悪逮捕、起訴されます。
確定申告をしないと損することばかりです。申告は必ずするようにしましょう。
まとめ
確定申告は自分でできる!
昔はあらゆる取引を自分で帳簿に記帳する必要があり、会計ソフトを使っても簿記の知識がない人には難しいということがありました。
今はクラウド会計ソフトを使えば、銀行の口座データやクレジットカード明細も自動で取り込めるので、以前よりグンとカンタンになりました。
また、@決算の売上原価の算定や減価償却の計算
A勘定科目の1年間の合計金額や残高の計算
B収支内訳書や青色申告決算書への合計金額の転記、作成
C確定申告書Bの作成
についても、大部分を自動で作成してくれるようになりました。
仕訳件数が少ない間は、ずっと無料で使えるクラウド会計ソフトもあるので、まずは自分でチャレンジしてみることをおすすめします。
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